きれいに食べるよりも自分で食べることの方が大切

食事介助は在宅介助の基本となるものです。
それまで元気だった高齢者が、病気や怪我などで家族から介護を受けるようになったときに世話を受けるのが食事だからです。

元気な時にはごく自然に行っている箸やスプーンなどの使用も、病気によって体の感覚が損なわれてしまったり認知症や筋肉の衰えが進行したしまったときには自分の意志ではコントロールできなくなってしまいます。

介護を初めて行う人にとっては「汚く食べられると見苦しい。できるだけキレイに食べてもらいたい」という意識から、つい相手の口元に食事を運んであげようとしたり、こぼしたときにすぐに片付けようとしてしまいがちです。

ですが高齢者への食事介助においては、キレイに食べてもらうということよりも、できるだけ長く自分の力で食べてもらえるようにするということの方が何倍も大事です。

もし箸やスプーンがうまく使えなくなり、頻繁に手づかみをするようになったとしてもそれをいちいちとがめるのではなく、本人が美味しそうに食べているならそのままにしてあげた方がよいです。

仮に手づかみであったとしても、自分でどの順番でどのくらいの分量を食べるかということをコントロールするということは本人の体によい影響を与えます。

食べているならそれでいいというくらいの寛容な気持ちで、手づかみでも食べやすい形で提供してあげるくらいの受け入れ方をしてください。

安全性だけでなく食の楽しみにも気を使って

咀嚼に問題がある高齢者の場合、食べやすいようにと気を使って最初から柔らかく食材を調理してあげるということはよくあります。

ですが大人の感覚で見た場合、そうしたミキサー食や刻み食というものはまるで離乳食のペーストのようでちっとも美味しそうに見えません。

仮に健康に気を使って作っている料理であっても、見るからにまずそうな料理では食事の時間を楽しむことはできないでしょう。

全国にある高齢者施設の公式サイトなどを見てみると、普段の食事の様子が写真で掲載されていたりします。
そうした食事は柔らかく食べやすい調理方法をとっている一方で、見た目もきちんと美しく美味しそうに見えるように盛り付けされています。

咀嚼に問題がある高齢者であっても、できるだけ常食と同じような見た目にしてあげるということも大切な食事介助のコツになります。

ソフト食を作るのに手間がかかりすぎるという人は、ソフト食専用の配達サービスもあるので最初はそうしたところでメニューを勉強してみるのもよいかもしれません。

食べやすく調理をするコツとしては「ゼリー状に固める」「片栗粉などでとろみをつける」「水分を多く含ませる」ということが挙げられます。