認知症で大切なのは拒絶ではなく受容です

社会問題となっている認知症は、今やどの家庭においても無縁ではありません。
ただし介護をする側がしっかり理解しておく必要があるのが、認知症はある日突然に発症するものではなく基本的にゆるやかに進行してくものであるということです。

最初のうちは言動がちょっと怪しいと思うようなことがあったり、性格が変化してきたように感じたりします。
認知症が一気に深刻化するのは、そうした緩やかな症状が何らかの原因により急激に悪化した時です。

生活環境が大きく変わったり、身近な人との離別があったりしたような場合には、精神的なショックの大きさから急激に症状が進行してしまうことがよくあります。

認知症の症状と思われる言動が見られたときには、まず頭ごなしに叱責をしたり言い返したりするのではなくまずは受け入れるということから始めましょう。

認知症は脳内で起こる病気であり、現在治療法のない不可逆的な症状として知られています。
ですので初期の段階で誤った対処方法をしてしまうと、お互いに大きなストレスを抱えてしまうことになり症状が悪化するばかりか周囲の家族間で対立が起こってしまうことがあります。

認知症が疑われるときには、認知症となった高齢の家族だけでなく周囲の人が巻き込まれてしまわないように十分に気をつけていく必要があります。

家族が認知症になってしまったときにはつい周囲の目を気にして近所に隠そうとしてしまいがちですが、徘徊などが起こる可能性もあるのでできるだけ早めに事情を話し協力してもらうようにしましょう。

意地を張っていても助けてもらいたいと思っていることも

認知症にはいくつかのタイプがありますが、共通しているのは徐々に脳内の細胞が萎縮して徐々に能力が損なわれていくということです。

そのため記憶があやふやになっていくのと同時に、それまで出来ていたことが急にできなくなるということが起こります。
文字がかけなくなったり、箸やスプーンが使えなくなる、ボタンをはめることができなくなるといったことが起こるため、最初のうちは発症をする本人が一番ショックを受けます。

何かができなくなってしまった時、高齢者の多くは恥ずかしくてそれを言い出すことができず、下手な言い訳をしたりすぐにバレる隠し方をしてしまったりします。

ですが内心では「手伝ってほしい」「助けてほしい」と思っていることが多く、最初にそれを発見した家族がどのような態度をとるかによりかなり様子が変わってきます。

あれ?おかしいな、と思ったらまずとがめるようなことは言わず、そっと手助けをしてあげるようにしましょう。
案外自分自身が認知症になりつつあり、能力が損なわれてきているということを自覚した方が症状を抑えることができるものです。